ワイヤレスネットワークの入門 [ホワイトペーパー]
2008年12月3日
はじめに
携帯電話ネットワークなどの非常に接続数の多いワイヤレスネットワークの存在はよく知っていますが、信頼性、パフォーマンス、そしてセキュリティに対する懸念が、このコアネットワーク技術を作業現場に持ち込みにくくしています。代わりに、オートメーション用途で使用される現行世代のワイヤレス製品は、単純な送受信器に依存しており、高度なネットワーク機能が使用されていません。
ワイヤレス製品の特性を最大限に生かすには、オートメーションおよびプロセス分野の技術者と管理者は、これらの製品が相互にまたはネットワークとどのように連携して機能するのかを理解する必要があります。
このホワイトペーパーでは、次のような非常に基本的なネットワークの知識について概説しています。
- ネットワークの基本構成要素
- 一般的なネットワークトポロジ
- ネットワークの構成
ネットワークの構成要素
すべてのネットワークは基本的な構成要素で作られています。過去20年に渡り、ネットワークエンジニアはこういった基本的なネットワーク構成要素を使って、日常生活の多くの場面に浸透した、信頼性が高く、高速で電力効率の良い製品を作ってきました。
ワイヤレスセンサネットワークには、次の構成要素が使用されています。
ノードは、ネットワークにおいて最も基本的な構成要素です。技術的に見て、ネットワーク内のすべての装置がノードですが、この目的では、1つ以上のセンサやアクチュエータと1つの無線が搭載されたワイヤレスネットワーク装置をノードとします。ネットワークのそれぞれの無線は1つのノードであり、無線に複数のセンサが含まれていても1つです。
リピータ (中継器) は、信号を受信し、その信号を増幅して、送信器側の信号を中継することで、無線信号をより長い距離移動させることができます。
ルータは、2つ以上の類似するネットワーク間の分岐点として機能し、ネットワーク間で情報を転送できるようにします。
ゲートウェイは、別のプロトコルを使用するほかのネットワークのインターフェイスとなるノードです。情報をほかのネットワークが理解できる形式に変換します。ほとんどのゲートウェイにはルーティング機能もあるため、ゲートウェイは2つのルータが背中合わせに立ち、それぞれのネットワークに異なる言語を話していると考えるとよいでしょう。
一般的なネットワークトポロジ
ネットワークの観点で、トポロジとは、ネットワーク内のノードがどのように接続されているかを表します。
ポイントツーポイント(1対1) - ネットワークの最も基本的な形態ポイントツーポイントと呼ばれています。名前のとおり、このネットワークでは2つの装置が相互に接続されています。
バス型 - バス型ネットワークでは、ノードは「バス」と呼ばれる共通通信路を介して接続されています。バス型ネットワークでは、あるタイミングでどのノードがデータを送信できるのかを決めるための最も一般的なメソッドの2つに、マスタ/スレーブとキャリア検知多重アクセス (CSMA) があります。
- マスタ/スレーブ メソッドでは、バス上の1つの装置がマスタで、スレーブと呼ぶ別の装置に定期的に問い合わせまたはポーリングします。Modbusは、大規模なエリアに導入されているネットワークまたは既存の有線ネットワークに接続されているネットワークで優先されるマスタ/スレーブ バスネットワークプロトコルです。
- CSMAバス構造では、それぞれのタイミング周期 (またはエポック) に、ネットワーク上の装置が復帰し、ネットワークでメッセージを送信できるかどうかを検知し、そうである場合にはメッセージを送信します。
マルチポイントツーポイント(多対1) - たとえば複数のノードが1つのゲートウェイに接続しているように、多数の装置が1つのポイントに接続されている場合を「マルチポイントツーポイント(多対1)」と呼びます。その形状により、このネットワークは、ハブ・スポーク型ネットワークまたはスター型ネットワークとも呼ばれています。スター型ネットワークの利点は、各ノードが独自の通信経路でゲートウェイに接続されていることです。1つのノードとマスタ装置間の通信が失敗した場合、ネットワークの残りに影響がありません。
ツリー型 - 基本的なスター型アーキテクチャにリピータを追加すると、ツリー型トポロジになります。最も低いレベルにあるのがノードで、「ルートノード」と呼ばれます。この唯一の機能は、次の高位レベルに情報を送信することです。中間レベルの装置はリピータで、最上部にあるのがゲートウェイです。この設計では、リピータの1つに障害が発生した場合、ノードとゲートウェイ間の接続が切断されます。
メッシュ型 - 信頼性を改善するために、ネットワーク設計者によって「メッシュ型」というアーキテクチャが開発されました。メッシュ型ネットワークでは、各ノードのルーティング機能は制限されており、少なくとも2つの別のノードとのネットワーク接続を維持します。そうすることで、1つのリンクが断線した場合でも、代替経路を使ってゲートウェイに情報を転送することができます。この場合のゲートウェイはネットワークの任意のノードです。
ネットワークの構成
アドレス指定
メッセージを受信するには、ネットワークの各ノードに一意のアドレスが必要です。アドレスは、ネットワークが作成されtとき、つまり、ノード、リピータ、およびゲートウェイ間の無線リンクが確立されたときに定義されます。
ワイヤレスセンサネットワークに、インターネットで使用される複雑な動的アドレス指定スキームのようなものは必要ありません。代わりに、簡単にアクセス可能な2つのロータリースイッチに依存する単純な静的アドレス指定スキームを使用できます。
- 左ロータリースイッチは、トップレベルのアドレスであるネットワークIDを設定します。これは、特定のネットワークIDにあるすべてのノードがゲートウェイと通信するために使用する無線のホッピングパターンを確立します。0から15までの16個のネットワークIDが可能です。
- 右ロータリースイッチはノードの装置アドレスを設定します。0から15の値で構成されます。
2つのロータリースイッチを使用するネットワークでは256個の一意のアドレスをサポートします。これは、16個のネットワークIDと16個の装置アドレスの可能な組み合わせです。
実地調査
ワイヤレスネットワークを設置する前に、実地調査によって、すべてのコンポーネントが設置される場所でそれらが通信できることを確認します。このプロセスは複雑で費用の掛かるものとなり得ますが、実地調査ツールを内蔵したワイヤレスネットワーク設備を制作することができます。ユーザーが、ゲートウェイに特定のノードの実地調査の開始を要求すると、ツールが自動的にすべての試験を実施する仕組みです。
ネットワーク内でのメッセージの移動
ワイヤレスレットワークのアドレス間で送信される情報は、「パケット」と呼ばれるフォーマット済みのブロックに含まれます。このパケットは、パケットの送信先であるアドレスや送信される情報の種類といった情報が含まれる「ヘッダー」、データそのものである「ペイロード」、そしてパケットの終点を示す「トレーラー」という3つの要素で構成されています。
このメッセージを確実に送信するために、効率的なネットワークが装置間の通信を調整しています。一般的に、ほとんどのネットワークはマスタ/スレーブの概念をサポートしており、いかなるタイミングでも、ネットワーク上の1つの装置がネットワークを制御する「マスタ」で、残りがそれに応答する「スレーブ」です。ゲートウェイがマスタで、すべてのノードがスレーブである場合もあります。または、ネットワークに接続されたコンピュータにゲートウェーが接続されている場合、そのコンピュータがマスタである場合があります。
ネットワークがメッセージ受信についてどのように構成されているかによって、システムのパフォーマンスが変わります。ワイヤレスシステムの機能を正しく理解するには、ネットワークがサポートするメッセージの種類を理解することが重要です。
- ポーリング。マスタはスレーブにポーリングし、ネットワークで送信するメッセージがあるかどうかを確認します。スレーブにメッセージがある場合、特定のアドレスにパケットを生成し、マスタに示されたらこの情報をネットワークに送信します。こうすることで、マスタはネットワークへのアクセスを制御し、各ノードにメッセージを通信するための特定のインターバルを確保しています。
- 巡回。スレーブは、「温度を3分おきに送信」といった特定のパラメータ設定に基づいて、定期的にマスタ宛てのメッセージを生成します。スレーブはスリープモードから復帰し、温度を計測し、無線をオンにして、認識可能なトラフィックがネットワーク上にないかリスンします。無い場合はパケットを作成して送信器からパケットを送信します。
- イベント駆動。超過温度または低残量バッテリーなどのイベントによって、メッセージがトリガされます。この場合は通常、ノードはネットワークへの迅速なアクセスが必要となるため、マスタに通知することができます。
バナーのSureCrossシステム
バナーエンジニアリングのSureCross™ ワイヤレス製品は、4つのネットワーク基本構成要素の機能をノードとゲートウェイの2つの異なるハードウェアパッケージに統合します。ノードは、最大4つの異なるセンサやアクチュエータに接続できます。ゲートウェイはルーティング機能を実行し、リピータまたはModbusネットワークへのゲートウェイとして構成することができます。
SureCrossは、ネットワークに対して信頼性が高く単純に設計されています。
- SureCrossはスター型トポロジアーキテクチャを使用しているため、ノーズはゲートウェイだけに情報を送信することができ、したがって不要な無線トラフィックを減らすことができます。ハブとして機能するそれぞれのバナーゲートウェイは最大16個のスポークまたはノードをサポートし、各ノードは複数のセンサをサポートできます。
- SureCrossのアドレスは、256個の一意のアドレスをサポートする2つのロータリースイッチを使って構成されます。
- SureCrossゲートウェイが異なるチャンネルを使用するように構成することによって、最大16個のハブ・スポーク型ネットワークが同一の無線空間を占有できます。
- 安全性を確保するために、ユーザーは、リピータへの無線リンクが事前に設定された期間断線した場合にバルブを閉じるといった特定のアクションを実行できるように、ノード上のセンサを構成できます。
- バナーSureCrossのそれぞれのノードとゲートウェイには、実地調査ツールが内蔵されており、ゲートウェイLCDに残りの結果が表示されます。
- SureCrossゲートウェイは、シリアル、イーサネット、Modbusの3つの出力モードをサポートしています。